個人サイト Otearai Web 作者 nagura
1974年京都府生まれ
平日はサラリーマンまがいの勤務をこなすかたわら、自サイトその他で腑抜けた駄文を連ねています。現在吸っているタバコはマイルドセブン(理由は安いから)。酒を飲むと気が大きくなってマルボロを買ってしまい、翌朝後悔することが多い。
   http://www5.ocn.ne.jp/~otearai/

ほぼ全てのたばこ自販機に年齢認証システムが導入されたのはご周知の通りである。

専用カードを持っていないと購入できない「タスポ自販機」が当初は市場を寡占していたけれど、ここにきて、「カードなしでかえる!」という謳い文句の顔認証たばこ自販機が次第に増えてきた。運転免許証のコピーや顔写真をいちいち郵送しないと発行されないタスポに比べると、これは確かに便利である。

とはいえ、実際に運用してみたところ、認証システムの裏をかくケシカラン未成年者の出現が問題になったりもしていて、不謹慎かもしれないけれど興味深い。

顔をしかめるだけで認証されてしまうシステムもどうかとは思うが、雑誌の顔写真にいたっては、よくもまあこんな原始的な手法を思いついたものだと、呆れつつも敵ながらアッパレという気さえしてくる。

こういったケシカラン未成年者に対抗するべく、メーカー側としては認証システムの精度を上げると同時に、まばたきしないと画像認証されないように工夫するらしいけれど、だったらまばたきしている俳優の動画をケータイで提示すればいいんじゃないかと素人ながらに心配してしまう。もしもそれがダメでも、上手にメイクすれば、いくらでもごまかせるんではなかろうか。

そういや高校生のころ、酔っ払って背伸びして、友達とポルノ映画館に入ったときのことを思い出す。ポルノ映画館はもちろん18禁であり、高校生のぼくらが通過するには、チケット売り場のおばさんによる「人認証システム」をすりぬけなければならなかったのだ。

そこでぼくらが採った手法は、手持ちの鉛筆とサインペンを用いた特殊メイクだった。まず、サインペンの極細側を用いて、口まわりに無精ヒゲを描いていく。さらに鉛筆を使って、目の下や頬にシャドウをつけ、やつれた中年男性っぽい顔立ちにする。こうした上で、「やっぱ仕事のあとのビールは最高ですな!」「そうやね。よっしゃ、ここらでひとつリフレッシュしていくか!」などと会話しながら、チケット売り場で「大人3枚!」とやるわけである。

こうやって振り返るとあまりの莫迦莫迦しさに目まいがしてくるが、高校生当時のエロへの希求と背伸び願望は、こういった行為への素朴な疑問さえも見事に吹き飛ばすくらい圧倒的だった。まったく恐ろしい話である。

それはさておき、結論から言うと、特殊メイクを施したぼくら莫迦トリオはチケット売り場のおばさんを無事に通過することができた。あまりに嬉しかったぼくらは、シアターに入るまでの廊下で笑みを押さえきれず、「ふふふ、とうとうやりましたな!」「そうでやんすな!」と、傍から聞けば何者なのかてんで分からないうわずった会話を繰り広げていたのだが、よくもまあ、あんなお粗末な即興メイクでバレなかったものである。いまになって思えば、チケット売り場のおばさんも、高校生の涙ぐましい努力に同情して売ってくれただけかもしれないけれど。

もちろん、このような行為が道徳的にいいわけではない。高校生がポルノ映画にうつつを抜かすなんぞ何事だ! とおっしゃる向きもあるだろう。ただ、「18禁」と言いながらもサインペンと鉛筆による即興メイクで高校生が入れてしまうような曖昧さは、ちょっとくらい社会の中にあったほうがいい人間的な潤滑油であるようにも思う。そして、機械による最先端の年齢認証システムにも、こんな人間的な小細工が通じるかもしれないことに、なんだか可笑しみを禁じえない。

あと個人的には、顔認証システムでたばこを買ってる人の姿がどうもマヌケで、見かけるたびに笑いそうになってしまう。なにしろ、中腰の姿勢のまま10秒間くらいカメラを見つめなくてはならないんである(おまけにメガネも取っている!)。人は普通、ひとりで中腰の姿勢のまま10秒間くらいじっと一点を見つめたりしないのだ。

俳優の竹内力さんなんかも、顔認証システムでたばこを買われるときには、「中腰の姿勢のまま10秒間くらいじっと一点を見つめ」させられるんでしょうねえ。「ごっつう辛気くさいのぅ…」というドスのきいた氏の呟きが聞こえてきそうです。