- 個人サイト Otearai Web 作者 nagura
- 1974年京都府生まれ
平日はサラリーマンまがいの勤務をこなすかたわら、自サイトその他で腑抜けた駄文を連ねています。現在吸っているタバコはマイルドセブン(理由は安いから)。酒を飲むと気が大きくなってマルボロを買ってしまい、翌朝後悔することが多い。
http://www5.ocn.ne.jp/~otearai/
昨今のタスポ導入やタバコ税増税問題については、各所で賛否両論が繰り広げられている。ぼく自身も本欄にて、消費者の立場からゴニョゴニョと物申しているわけだけれど、では実際のタバコ屋さんは、いったいどんな風な想いを抱いておられるんだろうか?
そこで今回は、街角のありふれたタバコ屋さんにインタビューして、このあたりの事柄についてお話をうかがってみることにした。なお、今回の店はかなりお歳を召したおばあちゃんが一人で切り盛りしておられるのだが、掲載にあたって、顔や名前は恥ずかしいから出さないでおくれと言われたため、具体的な店名や場所は伏せさせていただきたい。

お店全景
- ――どうもはじめまして。近所に住んでるもので、ちょくちょく買いにこさせてもらってるんですが…
- 「ああ、知ってますよ。ときどき買いにきてくれてはるねえ」
- ――ありがとうございます。実は私、インターネットの Go smoking というサイトで昨今のタバコ事情についてのコラムを連載してまして。そこでもしよければ、タバコ屋さんとしてのご意見を頂戴して、コラムで紹介させていただければ嬉しいんですが……
- 「いやー、ウチはそんな大層なもんとちごうて、年寄りが細々やってるだけですし。言うようなことなんて何にもありませんわ。どうせ聞かはるんやったら、もっと若い人の店に行かはったほうがええですよ」
いきなり難航の予感である。店を切り盛りしているおばあちゃんというのがまた控え目な人で、目立つようなことは頼むから勘弁してほしいといった風情なんである。ただ、こういったありふれたタバコ屋さんの意見こそ聞いてみたいわけで。そうかといって「ありふれたタバコ屋さんのご意見を聞きたいんです!」と正直に言うのもはばかられるので、ここはひとつ慎重に言葉を進めることにした。
- ――いや、あの、こうやっていつも買わせてもらってるのも何かの縁ですし。こちらこそ、そんな大層なことじゃなくて、何点か質問させていただくという形で、なんとか5分か10分くらいお時間をいただくわけにはいかないですかねえ…
- 「ほんまにとくに言うようなことはないからねえ」
- ――質問だけでも聞いてもらっていいですか?
- 「まあ、答えられることやったら答えるけど…。どうせ大したことは喋れんよ」
- ――はい、結構です!!
ふう、なんとか一件落着である。ここで難しい質問を投げかけて嫌がられたら元も子もないから、まずは簡単な質問からうかがっていくことにする。

店内光景(なぜか書道用和紙も販売)
- ――ところでこのお店、いつ頃からやっておられるんですか?
- 「昭和5年からやね。昔はタバコももっと売れてたし、店のほうもあんじょう(うまく)やってたんやけどね。まあ、これも時代の流れなんかなと思うてます」
- ――昭和5年からですかー。じゃあ、度重なる増税やら、警告文の改正やら、いろんなことをずっと見てきてはるわけですね
- 「そやねえ。増税はもう何回もしてはるわね。10年で3回やったかな。あ、ちょうどここに増税反対の署名があるわ」

たばこ税増税反対の署名運動
- ――1箱千円にしよう、なんていう意見もありますけど、タバコ屋さんとしてはどう思われますか?
- 「これも時代の流れやさかい、仕方ないと思うけどね。外国ではもっと税金高うとってるらしいし。ま、なるようになるわってとこやね」
- ――ずいぶん寛容なんですね…
- 「そらもう、たいていなるようにしかならんもんね。ただ、1箱千円になったら、買う人はだいぶ減るやろね。1箱千円になったら、ウチも廃業しようかしらと思とりますねん」
- ――廃業ですか…。やはり税金が上がるたびに、売り上げは落ちてますか?
- 「そやね。税金があがるたびに、お客さん減ってる気がするね。タバコ屋の取り分は値段の一割って決まってますんやけど、税金で値段があがったら、ほんまはそのぶん売り上げも増えるはずが、逆にだんだん減ってきてるさかいにね」
- ――税金が増えて1箱あたりの収入は増えても、減収になってしまうんですね
- 「そやわねえ。ま、税金だけやのうて、健康に悪いとか、そういうのも関係してるんやろとは思いますけど」
- ――でも1箱千円になったら廃業、ですか…
- 「そうなったら、いくら店構えてたかて売れへんやろうからね。1箱千円はやっぱり、ちょっと極端やとは思うね。消費税とかはよう上げんまま、弱いとこから、取れるとこからお金取ろうっていうのは、あんまりようない気もするわ。まあ、500円とか600円とかやったら、まだ買えはるかもしれんけど」
- ――そうですよねえ。1箱千円になったら、経済的にもこれまでみたいに買えなくなりますからねえ。ただでさえ、タバコ吸う人はこれから減っていきそうですし
- 「実際、ちょっと前のタスポ導入で、ここの地区だけで2軒、タバコ屋さん廃業しはったらしいですわ」
- ――タスポの影響って、やっぱり大きいんですね。この店ではどうでした?
- 「そらもう、タスポになったときは、それまでの1割くらいの売り上げに落ち込みましたよ。今はちょっとずつ回復してきて、それでも元の3割くらいですけど。あと今月から、顔認証の販売機も入れましたんで、それがどれくらい売れるか……」

お菓子コーナーは超セレクトショップ
- ――ちなみに、警告文が大きくなった影響とかはどうでした?
- 「警告文って何ですのん?」
- ――ガンになる危険性が高くなりますとか、怖いことが書いてあるやつですよ
- 「ああ、あれね。うーん、あれは売り上げには影響なかった気がするけどね。吸いたい人はあんまり気にせんと吸い続けはるし、やめようと思った人は、そんなん関係なしにやめはるし」
- ――そうですよねえ
- 「アメリカなんかやと、もっと気持ち悪い、ガンの写真とか載せてるんでしょ? そういう風潮やったら、これも仕方ないと思うけどね」
- ――ちなみに今は、お仕事はタバコ屋さんだけですか?
- 「タバコ屋は私がやってますけど、家族はみんな違う仕事してますわ。それにタバコは誰も吸わしませんし。まァウチらみたいなもんは、時代の流れにまかせて、なるようになっていくだけですわ。…こんなもんでよろしいですか? そろそろ出かけんとあかんので」
- ――あ、はい! どうもありがとうございました!
***
タバコ屋さんといえば、喫煙者いじめとも思える諸々の政策や風潮に怒りをあらわにしておられるんじゃないかという頭があったが、今回、街のタバコ屋さんにお話を伺ってみて、そういう人ばかりでもないことを知ることができた。お歳のせいもあるのだろうが、「なるようになるのみ」という悟りの境地というか、いつ引退しても構わんよという淡々とした語り口がとても印象に残るインタビューだった。
ただそれでも、極端な増税などによってこういうお店が廃業に追い込まれていくのは、なんとも寂しいものだなあと、ユーザー側としては勝手に思ってしまうのでした。

味わい深い化粧紙も販売されてました
