- 個人サイト Otearai Web 作者 nagura
- 1974年京都府生まれ
平日はサラリーマンまがいの勤務をこなすかたわら、自サイトその他で腑抜けた駄文を連ねています。現在吸っているタバコはマイルドセブン(理由は安いから)。酒を飲むと気が大きくなってマルボロを買ってしまい、翌朝後悔することが多い。
http://www5.ocn.ne.jp/~otearai/
本欄のコラムはもともと「タバコの話題について何でもいいから書いてください」と依頼されて書き始めたものである。
それが次第に、「やっぱり何を書いてもいいですよ」「タバコと全然関係ないことでも大丈夫ですから」というすこぶる寛容なことになってきて、お言葉に甘えて単なる旅行記なども何度か掲載させてもらったのだけれど、「何を書いてもいい」というのは却って書きづらいものであることに気付き、その後は自分なりに「多かれ少なかれタバコに関係した文章」というシバリを設けて、細々と執筆させてもらっているのだった。
それが今回は珍しく、Go smoking 本部のお茶汲みさんから「せっかく本を出したんですから、その裏話的なものとか書いてみてくださいよ」という風な提案を受けた次第でありまして。裏話なんてとくに無いんだけどなァ…と一瞬思ったけれど、たまにはタバコと関係ないことを書いてみるのもいいかと考え直し、今回は無い裏をひっくり返しながら、作製の裏側についてしたためてさせていただくことにする。
ところで『ナグラる』出版の話は、元を正せばここでの連載がきっかけで始まったようなものである。Go smoking の会長というのがそもそも、いろんなイベント等の企画・制作を手広く行っている会社の社長さんだったり、その関連会社に出版部門ができたりしたことから今回、書籍化のオファーをいただいたというのが大まかな流れになるだろうか。
ただ、ぼくが自サイトで書き続けている「プチ日記」とここでの連載コラムだけを合体して本にしたところで、所詮はタダで読める既存の文章の寄せ集め。これではダメだろうというので急きょ、書下ろしを加えることになったのだった。
まとまった量の文章を新たに収録してもらえるのは正直嬉しくもあったけれど、それと同時に大きな不安もあった。というのも、書き下ろしのテーマについても版元は随分と寛容で、全体として4万字程度というシバリがあるのみ。あとは「なにを書いてもいいから」という、無名のライターにとってはあり得ない展開となったのだ。
初めて出す著書の書下ろしが「何を書いてもいいから」。こんなフリーダムなことが世の中にあっていいんだろうか?
しかしフリーダムというのは、裏を返せばすべて自分で考えなければならないわけである。与えられたテーマであれば、それについて調べたり考察したりしながら原稿を組み立てていくという手法が使えるし、それで原稿のクオリティが最悪であっても「このテーマで書けって言われたんだから仕方ないじゃん」という言い訳ができるのだが(できないか?)、自分で決めたテーマだとこうはいかない。「オマエが決めたテーマだろうが」となるから、下手なことは書けなくなってしまったんである。
すっかり困り果てて「何を書いたらいいんでしょうねえ…」と編集者の西條さんに相談してみたこともあるのだけれど、「そりゃもう、名倉さんが書きたいと思ったことを、バーンと書いたらいいですよ!」と、これまた豪快というか放任主義というか、ぼくにとっては泣き面に蜂のようなお言葉をいただいてしまった。
どちらかというとぼくは、のらりくらりと大事な核心を避けることだけ考えて日々を生きているような輩である。今だから言うけれど、「これだけは絶対書きたい!」なんていうテーマがあろうはずもなく、ましてや「書くための必然性」なんて皆無、カーイムッ! というのが本音だった。
乏しい経験ながら、ものを書くためには「内圧」と、それをコントロールする「手綱」の両者が大切であるように思う。ぼくの場合はもちろん両者とも困窮を極めていたわけだけれど、ただ、もともと口下手で思うように冗談などが言えず、そのせいである種の「内圧」が一時期高まっていたのは事実である(このあたりは『ナグラる』の書き下ろしに詳しく書いた通り)。しかしながら、自サイトを開設して何年にもわたって日記を書き綴っているうちに、そんななけなしの内圧は、枯渇したガス田のごとく完全に抜け去っていた。
日々のおもしろエピソードなんて、あったらあったその日に、喜び勇んで日記にしているのだ。プチ日記からの抜粋はそういうエピソードの蓄積だからいいけれど、それを今さら長文で書き下ろすなんて、とてもじゃないができっこない!!
だったら何を書けばいいんだ…と思い悩んだ末、やむなく逆の発想でいくことにした。「もし自分が、いつも読んでいるサイト作者の本を手に取ったとしたら、どんな内容の文章を読みたいと思うか?」。こう考えてまず心に浮かんだのが、その作者の人となりや成り立ちが延々と書かれている自分語りストーリーだった。いつも読んでいるサイトの文面が読者向けの「表」であるなら、その「裏」というか生身の部分を垣間見てみたい。表を知っているからこそ裏が知りたいし、裏を知っているからこそ表が一層楽しめるのではないかと。
…そんなわけで、乏しい「生身」を搾り出してみたのが今回の本の書き下ろしである。書いているうちに自分語りに勢いがついてしまって、今となっては読み返せない文面も連ねてしまった。例えて言うなら、パンツは脱がないけれど、ズボンまでは脱いでしまったという感じだろうか。
「テメエのパンツなんて見たくもねえよ!」とおっしゃる向きも大勢いらっしゃるかもしれない。でもそれは、ぼく自身が他人のパンツくらいまでは見たいなァと常々思っているからなので、どうかご容赦いただければ幸いである。
ともあれ、作製に尽力してくださったスタッフの皆さん、そしてご購入くださった方々に、この場を借りて改めて深謝をささげたい。
