個人サイト Otearai Web 作者 nagura
1974年京都府生まれ
平日はサラリーマンまがいの勤務をこなすかたわら、自サイトその他で腑抜けた駄文を連ねています。現在吸っているタバコはマイルドセブン(理由は安いから)。酒を飲むと気が大きくなってマルボロを買ってしまい、翌朝後悔することが多い。
    http://www5.ocn.ne.jp/~otearai/


第二次大戦中、国家機密として日本地図から消された島が、広島県の沖合いに存在する。その名は大久野島、別名「毒ガス島」。

地図から抹消された理由はただ一つ。当時から国際協定で禁止されていた青酸ガスやイペリット、ルイサイトといった殺りく用の毒ガスを、島ぐるみで大量に製造していたから。いわば島全体が巨大な毒ガス工場だったのだ。

現在は国民休暇村としてリゾート地になっている大久野島であるが、毒ガス工場や貯蔵庫が今もなお、廃墟としてその姿を晒し続けているという。

タバコを吸っているだけで毒ガス扱いされかねない昨今の世の中、ここはひとつ本物の毒ガスと向き合い、隠された歴史を見つめるべきではないか。

…こんな無理ありすぎの「こじつけ」にいざなわれるまま、今回は大久野島に出向いてきたレポートです。



瀬戸内マリンビュー号

 

◆瀬戸内マリンビュー号にて

JR三原駅から忠海港まで出るため、まずは電車に乗って20分。

瀬戸内マリンビュー号はサロン風の特別車両だし、軽食&ドリンクメニューもあるしで、すこぶる快適な旅の始まりである。

毒ガス島巡礼のスタートがこんなのでいいのかと自問自答しながらも、真っ昼間からビール。最高。
 


サロン風の車内
 

車内には軽食&ドリンクメニューも
 

船に乗って島に渡る

  船内は灰皿もあり喫煙OK
 

◆忠海駅から船に乗って

忠海駅から忠海港までは徒歩数分。

ちなみに「忠海」は「ただのうみ」と読む。まるでお相撲さんの四股名のようでちょっと可笑しい。

…と一人でニヤニヤしながら船に乗り込み、船に揺られること15分。目当ての大久野島がさっそく眼前に迫ってきた。

なお、船内にはデカい灰皿がドーンと置いてあって、もちろん喫煙は自由。本当に一服してもいいのか、つい周りをキョロキョロしてしまいました。

気がつけば、喫煙OKの客室に違和感を抱く世の中になっているんだなあと。

 


資料館入り口


液体毒ガス製造装置
 
◆まずは毒ガス資料館に

島に上陸してしばらく歩くと、国民休暇村の隣に毒ガス資料館を発見。

さっそく中に入ってみると、そこにはイペリットやルイサイトを抽出するための陶器マシンや、工員が着用していた防毒スーツ、その他いろんな部品が所せましと並べられていた。

防毒スーツといっても当時のものは出来が悪く、縫い目から毒ガスが入り込んで全身の皮膚がただれたり、中枢神経が侵されてまっすぐ立てなくなったりする工員が続出したという。

また、急性中毒を免れた者も、その後数十年にわたって、肺ガンの多発などさまざまな後遺症が浮き彫りになっているらしい。


工員が着用していた防毒スーツ
 

その他いろんな部品が並ぶ
 

廃墟と化している発電所跡


立ち入り禁止の建物内部

 

◆自転車に乗って発電所跡へ

毒ガス製造には大量の電力が必要とされるため、専用の大型発電所が設けられた。

その発電所は今も取り壊されず、廃墟と化しながらも、当時のままの外観を保っている。

原爆ドームを残すことももちろん大切だと思うけれど、旧日本軍がやってきた、教科書に載らない歴史をこういう形で残すことも、同じように大切だと心から思う。

立ち入り禁止の建物内部にこっそり入ってみたら、「オメコが欲しい」だのといった身も蓋もない落書きが。

「喫煙許可」の文字も一瞬信じたが、よくみたら単なる落書きだった。

 


身も蓋もない落書き
 

喫煙OKだと思ったらこれも落書き

毒ガス貯蔵庫跡
 

◆さらに毒ガス貯蔵庫へ

製造した液体毒ガスは大きなタンクに入れて保存されていた。地震や空襲に遭っても大丈夫なように、山を切り崩して作った丈夫な貯蔵庫に保管された。

それが写真の貯蔵庫跡。壁の一部が黒ずんでいるのは、終戦後、火炎放射器で処分されたときの跡なんだそうで。
 


山を切り崩して設置されている
 

毒ガス貯蔵タンクの基部

我が物顔でウロつくうさぎ達


エサのニンジンが売られている
 
◆ウサギと戯れる、のどかな光景

こんな大久野島のマスコットは、野を自由に駆け巡るウサギさんである。

この島にはもともと多く生息していたウサギさん達。戦争中は毒ガスの実験動物として大量に使用されたらしいが、現在ではマスコットとして観光客に寵愛されている。

時代によって毒ガスで虐殺されたかと思えば、見知らぬ観光客から新鮮なニンジンを与えられたりで、当時を知るウサギがもしいたら、人間の身勝手に戸惑っているにちがいない。

今こうやってウサギにエサをやっている子どもたちは、毒ガス製造のことをどれだけ知っているんだろうか。

貴重な「負の遺産」を巡り終えたところで、深ーくタバコを一服した。


カメラ慣れし過ぎです
 

歩行中禁煙につき立ち止まって一服
 


「ひょっこりひょうたん島」のモデル
になったとされているひょうたん

…というわけで毒ガス島、いかがだったでしょうか?

島の外周およそ4Kmをレンタサイクルで巡ることができて、テニスコートやバーベキュー施設も整っているので、ご家族連れにもオススメです。

そういや何年か前、大久野島の土壌から高濃度の砒素(毒ガス製造の中間物質)が検出された、とニュースになっておりましたですが。

現在は一応安全だそうですので、戦時中には数千人の工員が毒ガス製造に携わり、甚大な後遺症を残したこの島で、海の幸に舌鼓を打ってみるのもまた一興かもしれません。